インドネシア

うなぎ人気が高まるローカル市場

近年、首都ジャカルタを中心に、一部の消費者の間でうなぎの人気が高まっている。日本食レストランでは、うな重やうなぎの蒲焼は他のメニューに比べて2~3倍の値段となっているが、ある高級和食レストランのシェフによると、インドネシア人の富裕層はこれらのうなぎ料理を躊躇せずに注文するという。

また、別の日本食レストランの営業担当者は、「最初からうなぎ目的で来店する客が増えた」と述べ、インドネシア人消費者へのうなぎ料理の浸透ぶりをうかがわせる。うなぎの蒲焼の甘いたれはインドネシア人の味覚に合うようである。この営業担当者は「うなぎの蒲焼をおやつ感覚で食べているようにみえる。親と一緒に来店したインドネシア人の子供が自らうなぎを注文していたのには驚いた」とも語った。

インドネシアで売られているうなぎの多くは中国を原産地とするものである。主要な輸入業者は、「リブラ」や「ますや」、「国屋」などで、調理済み の真空パックの形で輸入されている。うなぎ市場に詳しいPT.SHINKO ANEKA SAKTI SEJATIの安藤信二氏によると、インドネシアの月間輸入量は約10トンで、うなぎ1尾を200グラムとすると5万尾に達する計算になる。

日本のうなぎ料理を地元の一部消費者に広めているのは、富裕層をターゲットにしたすし亭グループ(インドネシア国内で16店舗を運営)や滝川(同25店舗)などの和食チェーンレストランのようだ。これらのチェーン店をすべて合わせると、国内で100店舗近くになる。すし亭グループでは、月間350キロ(0.35トン)も消費する店も出てきているようで、うなぎずしのほか、蒲焼、うな重というメニューがよく売れているそうだ。うなぎ消費の多くはレス トランだが、日系の日本食専門スーパーだけでなく高級食料品スーパーなどでもうなぎを扱うところが出てきている。

首都の高級ショッピングセンター、グランド・インドネシアの地下にある食料品売場「ランチマーケット」に日本の業者経由で仕入れた中国製うなぎのパックが販売されていた(写真1)。価格は200グラムのもので6万9,500ルピア(約641円、2010年12月20日時点、1円=RP108.5、以下同じ)であった。

また、隣りに建つ高級ショッピングセンター、プラザ・インドネシアの地下食料品売場「フードホール」にうなぎはあるかと店員に尋ねたところ、「売り切れた。次の入荷はいつになるか分からない」との回答だった。こちらの販売価格は200グラムで7万2,000ルピア(約664円)だ。店員の話によると、同店は日本人客が相対的に少なく、うなぎを購入していくのはインドネシア人が多いとのことであった。

一方、日本人が200~300人ほどしか居住していないバンドン市では、日本食スーパー「パパイヤ」の顧客は90%がインドネシア人あるいは日本人以外の外国人であるそうだが、1尾200グラムのうなぎが継続的に売れているとのことであった。同店では、惣菜コーナーにもうなぎの蒲焼が置いてあり、こちらは一切れ3万5,000ルピア(約323円)であった。

ちなみに、輸入された調理済みうなぎの真空パックには「中国製」と表示されているが、日本のメーカーが生産管理をしているため、中国製を避けたいと思う消費者も安心して受け入れているようだ。

インドネシア産うなぎの課題は味と香り

うなぎ人気が続くと、「一度はうなぎを食べてみたい」と興味を持つ、流行に敏感な消費者が出てくる。実際、カジュアルな日本食レストランも、うなぎはあるかと聞く来店者が増えてきたそうだ。ただ、現在の価格帯では中間層でさえ持続的なうなぎ消費につなげるのは容易ではない。そこで出てきたのが、インドネシア産うなぎの養殖だ。

インドネシアでは以前から、うなぎ養殖の研究が行われてきた。ある日本食専門スーパーのインドネシア人オーナーは、日本の国立大学農学部での留学経験を生かしてその可能性を模索した一人でもあるが、日本のうなぎとインドネシアのうなぎは種類が異なり、脂の乗り方や香りが日本人好みにならず、商品化するのは難しいと感じたそうである。

2010年7月にNHKのニュースで、インドネシア産うなぎの日本への輸出が取り上げられたことがある。日本への輸出ということは、日本の消費者にテスト段階で受け入れられたということであろうし、日本市場に出回っている中国産や台湾産のうなぎと味や香りの面でも遜色ない品質にまで達するようになったのだろうと推察される。実際、インドネシアで水産物の養殖に関わる日本人の間でも、インドネシア産うなぎの評価は上昇しているようである。

えびの養殖を研究しているある日本人男性は、「スラバヤ市でインドネシア産のうなぎを食べたことがあるが、味の面でかなり質が上がってきており、商品化される日は近いと感じる」と語っている。

インドネシアうなぎ専門家の安藤氏も「インドネシア産のうなぎでも味付けなどの研究を重ねれば、日本産にこだわらないインドネシア人消費者がレストランで口にし、スーパーで気軽に買うような時代がまもなく到来するのではなかろうか」と述べている。

インドネシアで食されているうなぎが日本産から中国産へ、そして次はインドネシア産へと移行していけるか、そしてこれを誰が手がけるのか、今後注目したいところである。

出所:ジェトロ・ジャカルタ調べ